発表年月日 |
2023/10/08 |
発表テーマ |
在日カンボジア人コミュニティの変容から見る「国フェス」の意義 |
会議名 |
第96回日本社会学会 |
開催地名 |
立正大学 |
学会区分 |
全国学会 |
発表形式 |
口頭(一般) |
単独共同区分 |
単独 |
開催期間 |
2023/10/08
~
2023/10/09
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概要 |
本報告は、いわゆる「国フェス」と呼ばれるフェスティバルの意味を、日本在住のカンボジア人コミュニティの変容から考察しようとするものである。、近年、日本在住のカンボジア人の構成が、元難民を中心としたものから、技能実習生や留学生を中心としたものに変わってきた。その結果、「カンボジア人コミュニティ」の役割も大きく変化してきている。その中で、難民の第一世代の中に、積極的に留学生とともに、日本社会との多様なチャネルを作ろうとする試みがなされている。こうした動きの意味するところは何か。この国フェスの特徴は、ホスト社会に生きる移民たちが、自分たちの文化の保持、あるいは母語を中心とした癒しやコミュニケーションのための実施する移民の祭りとは異なり、特にそれが基本的にはホスト社会の誰もがアクセス可能か公共空間で実施されることもあり、移民自身のための催しというよりは、ホスト社会に向けた催しであることにある(猿橋2020)旧来の移民コミュニティが実施する「移民の祭り」とは、「地域性」や「公開性」において異なることは、明らかだ。では、こうした従来の「移民の祭り」と切り離された「国フェス」は、カンボジアの移民コミュニティにとって、どのような意義がありうるのだろうか。完全に切り離された日本向けのイベントであり、移民コミュニティの必要性との接続はないのだろうか。 本稿では、こうした「国フェス」を希求する動きは、現在のカンボジア・コミュニティの変容との関連と無縁でないことを示しながら、「国フェス」の意義を考察するものである。 本報告では、いくつかのイベントへの参与観察と中心人物への聞き取りから、この動きを考察する。そのうえで、エスニック・コミュニティの構成員が、意図的にエスニック・コミュニティを日本社会側に開いていくことで、日本社会に統合しエスニック・コミュニティを忌避するような難民の二世や三世をも、エスニック・コミュニティに取り込んで行くことができるものとする。この結果、難民中心としたエスニック・コミュニティの構成員が減少していく中で、エスニック・コミュニティを維持していく方法の一つであると論ずる。新しく作られる日本社会とのつながりが、カンボジア人としてのアイデンティティを高め、難民第二世代と、カンボジアコミュニティとのつながりを再構築するきっかけになっていると結論する。 |